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uguisuが出来るまで 第4話「不動産巡りpart2」

さて「契約金100万円以内で居抜物件を見つける」という目標を掲げた僕は、手始めに理想としていたエリアである、原宿、渋谷界隈の不動産屋さんから攻めてみる事にしました。 不動産屋のドアをくぐり、店員さんに飲食店用の物件を探しているという旨を告げ、図面の山をかたっぱしからチェックしていく訳です。。ツꀀ図面に食い入るようにして見入る様は真剣そのものだったはずです。だって本気ですから。 不動産屋にある図面を隅から隅まで調べるとうのは、結構な時間を要します。慣れない作業なだけに数件の不動産屋を巡るだけでかなりの時間を費やしてしまいました。 でも、数件の不動産屋さんを巡るうちに、すぐにある2つの事に気が付きました。 一つは、「不動産屋に出回っている情報の多くは、他の不動産屋にも出回っている」という事です。 もう一つは契約金が「100万円以内の居抜物件などまず無い」。殆どの物件が造作譲渡費用だけで100万円以上するという現状でした。 小一時間粘って、不動産屋にある図面の全てをしらみつぶしにチェックしてみても、それらの図面の多くはどこか他の不動産屋で見かけた物であったり、しかもそのどれもが予算を遥かにオーバーしていたのです。 このやり方では時間がいくらあっても足りない。。   僕はやり方変える事にしました。   不動産屋さんに僕の望む条件を提示して、「もし条件に合う物件が出たら連絡をください」と伝える方法です。 不動産屋さんに伝える条件をあらかじめ紙に箇条書きにして、それを見せる訳です。 紙には次の様な内容の事を書きました。 ①希望エリア:広範囲(渋谷区、世田谷区、杉並区、目黒区等) ②面積7坪~11坪程度 ③坪単価1万3500円以内(上限15万円) ④合計契約金100万円以内(敷金礼金、保証金、造作譲渡費、前家賃等含む) ⑤飲食店居抜き物件(元喫茶店、スナック、ラーメン屋、焼肉屋、レストラン等) ⑥立地及び何階かは問わない(駅から離れていても構わない。むしろ多少離れている方が良い。) ⑦古い物件の方がいい。   そんな所です。   激安物件しか手が出せないという事で、希望エリアは「渋谷駅周辺限定」みたいな贅沢は到底言えません。もう正直場所はどこでも良いと思っていました。 とにかく自分がやってみたいスタイルを形にする。。それだけが目標でした。 という訳で①のエリアは「広範囲」としました。 従業員は雇わず、一人で店を立ち上げるつもりだったのと、家賃は払えてもせいぜい15万円がマックスだなと考えていたので、②の面積は7坪~11坪としました。 払える家賃の上限が15万円と考えていたので、カウンターだけの狭い物件でも仕方がないと考えていました。でも出来ればテーブルの一つや二つ置ける位の広さの店がいいなぁと考えていました。その方が僕が思い描いていたカフェの雰囲気が出しやすいと思ったからです。カウンターだけだと、どうしてもバー的なイメージが強くなるような気がしたのです。 最後の⑥と⑦の2項目についてはちょっと「えっ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、契約金が100万円以内という事で、駅近や新築の物件は現実的に無理だったというのと、僕は本気に駅から離れている古い物件にこそ、興味があったからなのです。 その理由については、また後で記す事にします。   これらの条件を提示すると、殆どの不動産屋さんは苦笑いしながら「これはないですね。」の一言で終わりでした。文字通り「一笑」されて終わりです。 でも、このやり方であれば、一軒の不動産屋さんでの滞在時間はほんの僅かで済みます。 その分、随分多くの不動産屋さんを回ったかと思います。正確には覚えていませんが、恐らく50軒は楽に超える数の不動産屋を回っているはずです。 数打ちゃ当たるの理論で、そのうちに何軒かの不動産屋さんから連絡がありました。 実際に条件に見合った物件の場合には、すぐに内覧をしました。 原宿や、渋谷、目黒では、僕の条件に見合う様な激安居抜物件は全くありませんでしたが、当時まだそれほど人気が無かった池尻大橋や、三軒茶屋、それから阿佐ヶ谷や高円寺辺りでポツポツと条件に収まるような物件を内覧させていただきました。 元カラオケスナックの物件、ラーメン屋。風俗関係に使われていた物件等いくつかの候補がありました。その中で最終的に、池尻大橋の元寿司屋さんだった物件と、三軒茶屋の元カラオケスナックであった今のuguisuの物件の2つに強い興味を持ちました。 池尻大橋の元寿司屋物件には、完全な状態の美しい厨房設備が残してありました。ガスコンロに、冷蔵庫、シンク、ダクト、ネタ用のショーケースまでかなりいいコンディションで揃っていました。しかも造作譲渡費用は0円でした。 … 続きを読む

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uguisuが出来るまで 第3話 「不動産巡りpart1」

さて高校生の頃からカフェもしくは喫茶店をやりたいと考えていた僕は、随分遠回りをしながらも17年経った35歳の時にuguisuオープンにようやくこぎつける事が出来ました。 その17年間の間には、大学に通いながらカフェやパスタ屋、割烹料理の店でアルバイトをしていた時期もあれば、「俺はバンドで成功するんだ」と勘違いをしていた時期もあります。(爆) 海外と国内の飲食店で修業の時代もありました。 随分遠回りをした感がありますが、その遠回りがあったからこそ現在のuguisuのスタイルの店が出来たのだと確信しています。 その紆余曲折があった17年間余りの間に、何度か父親に「お店を開きたいから、資金を援助して欲しい」と相談した事がありました。その度に僕が父親から言われた言葉があります。 それは「お前の考えは計画とは呼べない。それはただの夢だ。」でした。 今振り返れば、当時の僕はただ茫然とお店をやりたいと考えていた感があります。もしその時父親が、ポンと僕にお金を渡して「これでお前の夢をかなえてみなさい。」とでも言っていたら、どうなっていたでしょうか? 実際より10年近くも前に、自分の店を持つ事が出来ていたかもしれませんが、恐らく2年と持たずに僕はそのお店を潰してしまっていたかと思います。なぜなら当時の僕は、やる気だけはあったかも知れませんが、実際の飲食業の現場での経験と、その経験により生まれる引き出しが、今の僕より圧倒的に少なかったからです。   話が逸れてしましましたが、実際に店を一軒立ち上げるためには、父が言う様に「夢」ではなく、本気で明確な「計画」を立てる必要があった訳です。 僕の「計画」の上でネックになっていたのは、やはり資金がたったの300万円しかないという事でした。 予算300万円という数字が、一般的に考えれば圧倒的に資金不足だというのは、さすがに文系ひらめきタイプの僕でも気づいていました。 保証金や敷金礼金、造作譲渡費用等、不動産契約時にかかる費用。 照明やカウンター、テーブルや椅子、小物等、内装にかかる費用。 ガス台やオーヴン、レンジ、ミキサーや冷蔵庫等、厨房設備にかかる費用 お皿やカトラリー、グラス等、食器類にかかる費用。 オープン時に必要な食材や酒類。 その他、雑費。 ざっと挙げただけでも、これだけある必要な物を300万円で賄うという事は容易な事ではありません。切りつめられる部分はとことん切り詰めなければ、300万円でお店を出店するのは到底無理な話です。 そこで僕は「不動産に支払う金額は100万円以内」そして、「居抜物件を探す」という枠を決めました。 「居抜き物件」というのは、前の方が営業されていた際に使用していた設備や内装を片付けずに、次に借りる人が引き継ぐもしくは処分するという形の契約です。 厨房をゼロから作り、新たにダクトを付けたり、排水溝を付けたり、ガス管を引いたりしていたら、それだけであっという間に300万円を使い果たしてしまいます。 ならば「居抜物件」を探して、物件に残っている設備をそのまま使うしか方法はないと思ったのです。 現在、飲食店用の賃貸物件の殆どが「スケルトン」という状態で出回っています。それは借主と貸主間のトラブルを避けるために、一度物件を「スケルトン(まっさらの状態)」に戻してしまうというのが、今の不動産業界の常識だからです。 ただ、僅かですが前借主が借りていた状況をそのまま残して貸しだす「居抜物件」というのが稀に出てくるのです。勿論居抜物件に残された設備は、自分の思い通りの設備ではない場合がほとんどかも知れません。でも自分の使える資金が300万円しかないのであれば、贅沢は言っていられません。 100万円以内で居抜物件を見つけ、それをいじってなんとか自分の理想形に近づける。そのアプローチで行こうと決めたのです。   そうして僕の不動産屋巡りが始まりました。

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uguisuが出来るまで 第2話 「妄想の日々」

  実を言うと、僕はずっとずっと前から自分のお店、それもカフェを開きたいと考えていました。さかのぼれば、それは高校生の頃に始まります。 高校生の頃の僕は、少々背伸びをして渋い雰囲気の珈琲専門店やジャズ喫茶に行き、緊張しながらそれらのお店に対して憧れの念をいだいてのを今でも良く覚えています。 当時はインターネットも一般の家庭にはあまり普及しておらず、当然食べログや、またカフェのガイド本もありませんでした。 ですから自分の足を使っては街を歩きまわり、大人な雰囲気の喫茶店を見つけると、緊張しながら何度も何度も店の前をウロウロしたものでした。。何と言っても当時僕はまだ高校生でしたから、喫茶店で珈琲を飲むなんて、なけなしの小遣いをはたく一大イベントな訳です。時には何日も続けて店の前まで下見をしに行ったりした事もありました。当時の僕にはお金はありませんでしたが、時間は腐る程あったのでしょうね。笑 当時、流行りだった珈琲専門店のカフェ・ラ・ミル系列のお店にはよく行きました。隣駅の経堂にあった今は無き名店、「NIZAN」には数えきれないほど、足を運んだ覚えがあります。マスターには恐らく「なんだこのガキは」と思われていたかと思いますが。。笑 実際にuguisuを開業するまでには、それか約17年もの歳月が流れる事になるのですが、この「ウロウロ散策とお店の発見」は高校を卒業した後もずっと続く事になります。 でもなんとなくですが、この一見しょうもない暇人的行為も、uguisuというお店を作り上げるのには、必要な時間だった気がしています。 むしろネットやガイド本が今のように発達していなかったからこそ、知らない街をあてもなくウロウロする事が出来たし、また沢山の時間を費やしたからこそ、色々な想像(いや妄想と呼んだ方がしっくりきますね。笑)がその間に出来たように思います。 それは「一本入ったこの裏通りにはオシャレな店が多い気がするな。」だったかも知れないし、「こんなメニューの書き方って格好いいな。」だったかも知れません。「僕だったらコーヒーには小さなチョコレートと、小粒の角砂糖をこんな器に入れて添えるな。」だったかも知れません。 とにかくウロウロしながら、もの凄く様々な事を妄想する事が出来たのです。 自分がお店を構えた時の姿を妄想するって、なんだかちょっと恥ずかしい感じもしますが、とても大事な事だと思います。 僕なんてまだお店なんて持てる訳がない大学生時に、自分が店でオープン初日にかける一曲目のBGMなんてのまで妄想してましたから。笑 ちなみにその曲は、実際のオープン初日には恥ずかしくてかけませんでしたけどね。。笑

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「uguisuが出来るまで」 第1話:初期投資250万円

  飲食業って華やかな部分より、むしろその殆どが滋味な作業で、しかも体力を使う事が多い。 延々と魚の小骨を抜いていたり、ひたすら皿を洗い続けていたり。。労働時間も12時間以上、休憩もろくに取らず立ちっぱなしでの労働は当たり前の世界。 それでもやっぱりこの仕事って凄く面白くて、そしてとてもやりがいがある職業だと僕は思っています。 そんな飲食業の世界に身を置き、その中で一つの目標としていた「自分の店を持つ」という事が形に出来たのが5年前。それから5年間、本当に多くの方々に助けられ、どうにかuguisuを継続してこれたのは、とてもとても幸運な事だと感じています。 「uguisuが出来るまで」では、どのようにuguisuというお店が始まって、そしてどのように変化をしながら現在のスタイルになったのかを、少しづつ書いてみたいと思います。 これから飲食店を始めようと思われている方。uguisuで今一緒に働いている仲間達。飲食業に携わっていて日々精進を重ねている方々。 僕自身もわからない事ばかりで、毎日勉強させていただいている身分ですが、こんな感じで始めたお店もあるんだと、少しでも参考になればと思います。   「uguisuが出来るまで」 / 初期投資250万円   uguisuというお店はご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、僅か250万円で立ち上げたお店です。 不動産屋さんに支払った保証金、敷金礼金等、契約時にかかった費用が約100万円。 厨房設備及び内装外装に約100万円、オープン日までに必要なワインやら食材で約50万円。 ざっくりとですが、こんな感じで始めました。 最近では勝手が違うのかもしれませんが、僕がレストランで修業をしていた時代には「店を立ち上げるには最低1000万円は必要だよ。」とよく先輩方から言われてきました。 1000万円というマジックナンバーが、どこから出てきた数字なのかはわかりませんが、ろくに貯金もしていなかった僕には、1000万円なんていう大金の持ち合わせは当然ありませんでした。 かと言って僕に投資してくれる様なパトロンもいない。 でもどうにかして自分のお店を始めてみたい。 スズメの涙程度の貯金と、両親から借りたお金を合わせて計300万円。 それが僕の用意出来る金額でした。 だから僕は予算300万円で店を立ち上げてみる事にしました。 「300万円の新車を一台買う様なもんだ」当時の僕は自分にそう言い聞かせていました。 従業員を雇うような金銭的余裕もないから自分一人で始める事にしました。 それならたとえ売上がたたなくても、僕の収入がないだけで済む。 「もしuguisuがうまく行かなかったら、新車がすぐに事故で廃車になってしまったと思う事にしよう。」 「そうしたら、また一従業員としてどこかのレストランで働いて、車のローンを返せばいいじゃないか。」 先輩方の言う1000万円という額は手に余るけれど、車一台分程度の額と思えば、万が一失敗してもなんとかなるんじゃないかって。 そう思えば、なんだか踏み切れる気がしたからです。 なのでお店を立ち上げる際には、とにかくお金はかけない様に工夫しました。 結果的に予算より50万円安い、250万円でお店をスタートする事が出来ました。     僕は最初から理想の土地、理想の道具、理想の内装、理想の食材を揃える必要はないんじゃないかと思っています。 勿論、ここだけはゆずれないという部分は必要だと思いますが、最初はなるべく少ない投資で始めた方が絶対にリスクが少ないと思います。 きっと有名な映画監督だって、最初のデビュー作は低予算、しかも色々な制限が付きまとう中で、工夫をして映画を撮っていたに違いない。 あのスピルバーグだって、処女監督作品の「激突」では少ない予算で素晴らしい映画を作っているじゃないですか。 理想を追い求め始めたらきっとキリがない。 最初から自分の身の丈以上にお金をかけて店作りをするのではなく、自分に与えられた条件の中で、出来る限り自分の思う理想形に近づける店造りの方が、最初のスタートとしてはいいんじゃないかというのが僕の考えです。 … 続きを読む

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uguisu 立ち上げ回想録

料理通信さん等にも取材を受けた事があるので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、uguisuは250万円で立ち上げたお店です。 不動産屋に支払った保証金、敷金礼金等、契約時にかかった費用が100万円。 厨房設備及び内装外装に約100万円、オープン日までに必要なワインやら食材で約50万円。 ざっくりとですが、こんな感じで立ち上げたお店です。 お金が無かったという事実もありますが、お金をかけないで工夫するのってなんか格好いいと思っているからなんです。 洋服で例えるなら、ブランド品で全身揃えたコーディネイトより、古着を自分でリメイクしたスタイルの方が僕には等身台で合っているかなと思うからです。 uguisuを始めた時決めていた事があります。300万円以内でお店を立ち上げるという事です。    

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